治療用タンパク質の凝集解析 ~Sub visible particle (SVP)の定量解析、特性解析~
治療用タンパク質の凝集解析において、SVP(Sub Visible Particle)の定量解析と特性解析が必要な理由、SVPの各解析手法とマルバーン・パナリティカルによる分析結果、粒子特性解析と改善事例をご紹介します。
目次
- SVP解析手法1:広域をフォローするDLS、LD
- SVP解析手法2:モノマー~オリゴマーの定量評価に優れるSEC、AUC
- SVP解析手法3:サブミクロン領域をフォローするNTA、RMM法
- 凝集体定量解析のための粒子特性解析と、改善事例
- マルバーン・パナリティカルの関連分析装置
凝集体の定量解析と粒子の特性解析が必要な理由
抗体医薬品など治療用タンパク質に含まれる凝集は、実際には目視による確認はできません。従いまして、何らかの分析装置を用いてどの程度凝集が含まれるか?の定量評価が必要になります。
また一方で、検出された粒子がタンパク質由来なのか、添加物(糖など)由来なのか、その他のゴミなのかを区別するために、粒子の特性解析(Particle Characterization)も必要になります。
これらの粒子は、目視できるエリアと完全に目視できないエリアの間に多く存在するため、Sub visible particle、あるいは省略してSVPとも呼ばれます。以下には、SVPの各種解析と、マルバーン・パナリティカルによる分析結果等を記載します 。
凝集体定量解析のためのSVP解析手法と、マルバーン・パナリティカルによる分析結果
FDAをはじめ各国・地域の局方は、複数装置でのSVP評価を推奨しています。残念ながら、いずれの方法も一長一短があり、単一手法での分析にはエラーを含んでいるリスクが伴うからです。マルバーン・パナリティカルが、SVP解析分野において複数の装置ラインアップを揃えているのは、このような背景の下、より状況に応じた最適手法を提案するためです。
なお、FDAからは2014年に「バイオ医薬品の免疫原性の評価」に関するガイドラインが出ており、その中の項目の1つにタンパク質の凝集体の測定が取り上げられています。
SVP解析手法1:広域をフォローするDLS、LD
DLS(動的光散乱法) やLD(レーザ回折・散乱法) は定性的ではありますが、広いダイナミックレンジを持つため、タンパク質の全体分布を示すのには適した手法です。
次のグラフは、DLSによる上市された治療用抗体(赤)と研究用IgG(緑)の粒子径分布です。治療用抗体のほうがシャープな分布を示しており、ここから大きさ(形)のそろったものに仕上がっていることが伺えます。
SVP解析手法2:モノマー~オリゴマーの定量評価に優れるSEC、AUC
定量評価を実施するためには、現在のところすべてのレンジをカバーする原理は存在しません。
モノマー(約10 nm;全長抗体の場合)から定量評価できる原理としては、SEC(サイズ排除クロマトグラフィ) やAUC(分析超遠心)などが存在します。
中でもSECは手軽にモノマー/オリゴマー割合を算出することができます。さらに光散乱検出器を付け加えれば、詳細な分子量差を求めることができます。
SVP解析手法3:サブミクロン領域をフォローするNTA、RMM法
SVPの中でも特に存在量が多いといわれているサブミクロン領域(0.1 – 1 μm)では、定量的な検出ができるようになったのは最近のことで、NTA法(ナノ粒子トラッキング法) やRMM法(共振式質量分析法) がそれに該当します。
サブミクロン領域は、その存在量の多さのため定量評価しやすいだけでなく、特に近年では免疫原生との係わり合いが大きいと考えられている領域のため、FDAもその計測を強く推奨しています。
グラフはアルキメデス(RMM法) で計測した結果で、安定処方と不安定処方で明らかなSVP量の違いがあることを示しています。
凝集体定量解析のための粒子特性解析と、改善事例
FDAはまた、粒子の特性解析(Particle Characterization)の分析も推奨しています。また、「at least 2 orthogonal analytical techniques(2原理以上での分析)」を推奨しています。
Particle Characterizationの原則は「粒子は存在した」から始まります。つまり、検出された粒子が何者なのかによって、後の改善手法が異なります。
例えば、その粒子がタンパク質由来であれば、タンパク質あるいは処方を再検討するべきで、例えばセルロースの破片であれば、フィルターやクロマトカラム部材の再検討といった具合です。この場合、画像法 さらにRamanイメージング機能があれば、形状だけでは判断が難しい粒子の特性解析が可能になります。
事例1:治療抗体の生産プロセス改善
事例2:注射剤中のタンパク質凝集体とシリコンオイル油滴
タンパク質以外の材料が粒子とし検出してくるケースで最も多いのが、近年特に増えたプレフィルドシリンジ製剤(以下、プレフィルド)です。
プレフィルドは注射器の中にタンパク質溶液が充填されて販売されている製剤ですが、注射器の内側には、ピストンの動きを滑らかにするために、多くのオイル(シリコンオイルなど)が塗られています。シリコンオイル自体は問題がなくても、近年の報告ではこのシリコンオイルがタンパク質の凝集を促進させるという報告がされていて、それぞれの量を確認する必要性が出ています。
マルバーン・パナリティカルの関連分析装置
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ナノトラッキング粒子径測定装置 ナノサイトシリーズ 粒子のブラウン運動を追跡し、粒子ごとに測定するため、高い分解能で粒子径分布や粒子数濃度が得られます。 |
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